初めての天体望遠鏡

この間、乙女高原 星空観望会というのに家族で参加しました。残念ながら夜は曇ってしまっていて、会自体は楽しかったのですが星空が見えなかったという残念な感じだったのです。その会では反射望遠鏡の鏡面研磨をやっていまして、娘が少し研磨を体験させていただいたことが原因なのか?娘が望遠鏡を作りたい!っていうのです。で、将来は鏡面研磨をやるのもいいと思うんですが、やはり順番からいうと、まずシンプルな望遠鏡で自分で主体的に星をみて興味を持つというのが順番なのでは?と思うわけです。

家では、市販の反射赤道儀(実際にはこのリンクの前のモデル)で星を見ていて、娘にも見せてあげているのですが、とても小学校3年生の娘が一人で扱えるものではありませんし、まず気軽に自分で出してみることができる。というのがとても重要だと思います。

というわけで、シンプルな望遠鏡を娘に与えよう!と思い立ちました。

少し昔話をしますと、私がおよそ30年前に最初に手にした望遠鏡はビクセンのカスタム80Mという8cmの屈折経緯台でした。東京の街中でしたが、毎日のように社宅の屋上に持ち出してみていたのを思い出します。星を見ていると、機材も自分で作ってみたりしたくなって、自分でも5cmの望遠鏡を作ってみたこともあります。今となっては小学5年生にどうして設計ができたか思い出せないのですが、都電荒川線に乗ってパノップ光学、という今はもうない町工場に母親の手を引いてレンズを買いに行き、購入した5cm 焦点距離600mmのレンズに合うような鏡筒を設計し、ボール紙に墨汁を塗り、木工用ボンドを塗って、丸めて紙管を作りレンズを同じく紙製のレンズホルダーに収納し、接眼部は、塩ビ管に同じくボール紙製の接眼鏡ホルダーを取り付けて製作しました。架台は木製ピラーの上に載ったフォーク型の架台をべニア板で作りましたが、この組み合わせは持ち出しやすくセッティングも楽でよく見えた覚えがあります。確か、水平動のベアリングが、木の板に油を塗ったものをフォークと台座の間に入れるというもので、スムーズに動きながらもしっかり摩擦で止まるというもので微動要らずだった。

さて、今は2014年なので、娘の最初の望遠鏡にどういうものがいいかな~って考えてみました。昔自作した5cmの望遠鏡のことを思い出しましたので、‘5cmぐらいのにしようと思い、ネット検索をした結果、コルキットKT-5cm(30倍)というのにすることにしました。これは、キットの手作り望遠鏡ですが、紙管で作る、というところがググッとこっちの心に訴えるものがありました。小さな望遠鏡ですが、ちゃんと絞り環も入っていますし、現代の31.7mmのアイピースもつけられるようなので、これにしました。奇しくも昔自作した5cmと焦点距離まで一緒です。

キットでなく購入するのであれば、こちらなんかも安価でいいと思うのですが、望遠鏡を作るという体験ができることを重視してキットにしました。

一緒に微動装置(ビクセン カスタムと同じくタンジェントスクリュー型の微動)も購入したのでそれなりの値段にはなりました。

さて、届いたものはこちら。

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小さくまとまっています。

組み立て方は、必要な道具などを含め、添付の説明書に懇切丁寧に書かれているので、特に難しいということはありません。

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こんな感じで、絞り環を入れるところで管が分割式になっているので容易に絞り環がしっかり入った鏡筒が組み立てられるということです。対物レンズのシェルも、紙管で前後から押さえるという合理的な構造でよくできています。

小学3年生が一人で組み立てる。というのはちょっと難しいようなので、一緒に組み立てるべきところは一緒に。でもなるべく娘の手で組み立ててもらいました。説明書の感じも、まだ習っていない漢字も多いので一緒に読みながら作りました。

ただ、大人も一緒に作りますので、単にキットをそのまま作るというのはちょっとつまらん。ということで、色気を出して、鏡筒の内部に植毛紙を貼りました。植毛紙は、粘着テープなしのものを買い、木工用ボンドで鏡筒の内側に貼りましたが、かなり難しかったです。植毛紙を鏡筒内に貼ることで、絞り環で良好なコントラストで見えるところをさらによくしよう!という心づもり。

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管の奥には植毛紙を貼ってあるのですが真っ黒なのがわかりますでしょうか!?

出来上がったら、昼の間は、遠くの木を使って、導入とピント合わせの練習をしました。

夜になったら、ちょうど西の空に見えている三日月、それから木星、そして南の空に見えている火星と土星を見てみました。

月はクレーターがとても明瞭に見ることができました。30倍の倍率は、月が視界に収まり、月の散歩にちょうどいい感じがしました。次に木星は、縞模様と4大衛星をしっかりと確認することができます。娘にここで地球の自転で星が動いて行ってしまうことを教え、その動く方向が日が西に沈む方向と同じこと(望遠鏡は反対に見えますが。)を話しました。

次に今とても明るく輝いている火星。そして、土星を見ました。土星は当然ですが、輪っかがしっかりと見えました。火星は明るすぎて模様がどうかはっきりわかりませんでしたが、安定した像ではあるので、今度手持ちのもう少し倍率の大きいアイピースをつけて確かめてみよう。

そんな感じで、娘の望遠鏡。飽きずにいろいろ見てくれればいいなと願っているところです。

3Dプリンター 温度コントローラーを作る

3Dプリンターづいている今日この頃。みなさんいかがお過ごしでしょうか。

先日3Dプリンターのキットが届いたと書きましたが、そのあとキットの組み立てはまだしてないんです。並行してCNCルーターで3Dプリンティングをしよう!とか、思い付きプロジェクトをやっていて泥沼に入っております。

その泥沼プロジェクトで毎日朝晩シコシコ作業していたのが、温度コントローラーを作るということでした。

CNCルーターで3Dプリンティングをするにあたっては、プラスチックを溶かす関係上、温度の管理をすることが必要なのですが、そういう道具立ては残念ながら持っていないので作んなきゃな、ということで作りました。

このページで紹介されているものと、まあ似たようなものです。

出来上がったものは、

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こういうもので、ホットエンドとヒートベッド、それからホットエンドに付属のファンを接続して、温度制御、ファンのON/OFF制御ができます。設定温度の変更や各制御、それから設定のセーブ(EEPROMに)などが、本体の3つのボタンだけでできるようになっています。また、シリアルでPCに接続ができるようになっていて、サーミスターの定数や、温度制御のパラメターは、PCから変更でき、また、動作状況をPCからモニターできるようになっているのが特徴です。

基板の回路図を貼っておきますが、

基板のハードウェアとしてはおおむねArduino ボードにサーミスター入力、LCDとボタン3つ、MOSFET3つをつけただけ、みたいなシンプルな構成です。IC基板で配線してもいいのですが、ここはいつもの習慣通り切削で基板作成しました。

温度の制御は、接続したヒートベッドなどへの電流をMOSFETでPWM的にスイッチングして調節するようになっています。PWMの周波数はあまり高いと、音がしてあまりよろしくないので、周期は1秒程度のゆっくりとしたPWM制御をしています。最初PWMは、ArduinoのanalogWrite() を使ってみたら、ビービー音がして落ち着かないので、今のようなゆっくり制御になっています。たぶん、使用した電源はアナログメーターで電流を見ているので、メーターから可聴域の音が出ているんでしょう。

また、温度のフィードバック制御は、ありきたりですが、PID制御を実装してみました。

ユーザーインターフェースはそれなりに凝ったものに作りました。ファンはアニメーションでONにしたときLCD画面内で回りますし、ヒートベッドへの電流量(PWM値)をLCDの外字を定義することでグラフィカルに表示したりしています。

さて、出来上がった温度コントローラーを、亀甲型ヒートベッドに接続して制御してデータどりをしてみました。というより、PID制御のテストをしてみた、といった方が良いかもしれない。

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これがテストの風景で、コントローラーの電源は、ずーっと倉庫で塩漬けになっていたアマチュア無線用の電源を使いました。20A以上流せるので大丈夫でしょう。

このヒートベッドを12Vで使うとおおむね7A程度の電流が流れますので、それなりに電源の配線は気を使います。少し電流容量が不足するかもしれませんが、配線は、18AWGのPC電源用の90cm延長ケーブルから線を切り取って行っています。

MOSFETは通電時かなり発熱しますので、このままではNGで放熱板をつける必要がありそうです。使用したMOSFETのON抵抗が最大0.08オーム程度あるとすると、7A通電時は4W弱のMOSFETでの損失になります。パッケージ(TO220)と外気の熱抵抗は63℃/W程度とすると、そのまま通電し続けると温度上昇は250℃以上という計算になり、チップの動作温度150℃を超えちゃいますのでアウトということになります。実際、MOSFETの発熱で、チップのON抵抗が高くなり、連続的に電流を流すと、電流値がだんだんだれてくるのが観察できます。無限大の放熱板をつけた場合には、これは、熱抵抗3.6℃/Wとなるようなので、14℃程度の上昇ですみます。

6/1に手持ちの3mm厚のアルミ板を25mm幅 100mm長さに切り出してMOSFETに取り付けてみました。結果は良好で、ヒーテッドベッドを120℃に調節した際も、MOSFETは手で触れる程度の温度に維持されているので、これでよさそう。

Reprapのコントローラー(RAMPSとかSanguinololu)を見ると、特にMOSFETに放熱板などはついていないので、どうなってんだろ。ヒーテッドベッドは直接つけられないんじゃないかな(とりあえず動くがそのうち壊れるパターン)。

コントローラー自体の消費電流は、17mA程度でしょうか。バッテリーにつないでいるわけではないので、特にCPUをスリープさせるなどの所作はしていません。

ヒーターのPID制御は下記のように行っています。

Terr(誤差) = T_target(設定温度) – T (現在温度) として、

pwm値(0-255) = Kp * Terr + Ki * ∫ Terr dt +Kd * dTerr/dt

でpwm値を計算して制御にかけています。∫Terr dt の項は、どんどん累積しても困りますので、-300~300の範囲にArduinoのconstrain関数を使って制約しています。

設定温度を70℃として、PCから動作状況をモニタリングしつつ実験をしてみました。

Ki_R4

これは、積分の項Ki=0.4としたとき、Kp(比例項)の係数を70~500で変化させて状況をみたもので、Kpが大きいと、温度変化が振動的になることがわかります。Kpはばね的な動きの強さに関わると考えることができそうです。

Kp_70

一方、Kp は同じで、Kiを変えた場合には、余り小さなKiでない限り動作は似ていますね。

Kiが0だと、ターゲット温度より低い温度にしかいかない。Kiを設定すると最初オーバーシュートしますが、おおむね安定な制御ができているようです。

実験の結果から、今の場合、Kp=70, Ki = 0.4あたりが無難なパラメターと言えそうです。

また、10℃温度を上げるのに、15秒ほどかかっています。

120℃にヒーテッドベッドを維持する試験もやってみましたが、結構大変で、少し風が吹くと温度が低下してしまってちょっとぎりぎりだなという感じがしました。高温を維持するにはヒーテッドベッドの電力が不足している感じで、みなさんベッドの下側の保温材とか遮熱版とか苦労されているようですが、単純にヒートベッドに加える電圧をあげるというのも解の一つかなという感じがします。(台座が樹脂でできていることが多くあまり熱を加えられないということもあるとはおもいますが)。運用するときは、コントローラーに加える電圧を15V程度まで上げるということをやるのがよさそう。MOSFETの放熱には少し気を使っておかなければいけませんが。

というわけで、温度コントローラーはおおむねよさそうなので、別に入手したキットを組み立てつつ、こちらのホットエンド・エクストルーダーを組み立ててテストしてみるつもりです。