鏡面のフーコーテスト

昨年から乙女高原の観望会で15cmの反射望遠鏡の鏡面を磨いています。月に1日程度の観望会の一環なので、非常にゆっくりとした進捗ですが、何とか昨年11月の観望会の時にセリウム磨きまで到達しましたが、残念ながらそこで時間切れ、観望会は12月~3月は冬季のためお休みです。

その間家で「自習」しようと思って道具を持って帰ってきたんですが、なかなか進められていませんね。

まず、鏡面を調整するのに、鏡面が理想の放物面からどの程度ずれているのか検査する必要がありますが、その道具がありません。

というわけで、12月から、鏡面検査のための道具(フーコーテスター)を作ってました。

ようやく、フーコーテスターが一応形になって検査ができるようになりました。

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これがテスターの全景。3Dプリンターの部品のあまりもの(NEMA17モーター、LM10UUベアリング等々…)を組み合わせて、XY微動テーブルを作りました。

0.8mmピッチのM5ネジを使って微動をしていますが、ステッピングモーターのマイクロステッピングを活用すれば一応1/4000mm単位で送れるハズ(実際はこんなに細かく送れる必要はありません)。

フーコーテストをするのに、こんな可動範囲の広いテーブルは全然必要ない(数cmもあれば十分)なのですが、他の測定にも使えるかと思って欲張った内容にしてしまったため、精度的に辛いことになってしまった感じ。

フーコーテスターのキモである、ナイフエッジと光源は、QCAMFTの図面をほぼそのまま頂いて作りました。

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この方式、鏡の光軸合わせをするときに、光源の前のスリットを一時的に(ずらして)外して明るい光にできるので、合わせるのが非常に楽です。とは言っても、明るい日中の部屋でテストをする時などは、光源の像が見えにくいので、写真のようにマグライトで鏡を照らしてその反射像で大まかに合わせこんでから、LEDライトの光源を探すと割合簡単に合わせられます。

ナイフエッジは、鉛筆削り(2個入りで100円!)の刃を使いましたがほぼ問題なさそうです。LEDは、ダイソーのLEDライトから白色高輝度LEDを外して使っています。最大で、10mA程度流すように、LM317で定電流回路を組んで光らせていますが、実際はその1/10程度の電流で十分以上に明るいです、が、明るさを変えられるようにすることは、必要そう。

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XYステージのモーターのコントロールは、これも3Dプリンターの部品のあまりものの、Pololu A4988ステッピングモータードライブモジュール2個を使い、これをArduino Uno (の互換品…)で制御しています。同じ基板にLEDライトの定電流回路も載せました。

最初は、Raspberry Piでこれを制御するように作っていたのですが、カメラのRaspberry Piの画像取り込みがあまりに遅いのが嫌になってArduino+PCベースに作り替えました。(かなりの回り道)

ナイフエッジの影の観測は、5xのファインダーを手持ちのUSBカメラをコリメート法で撮影し、PCで見られるようにしています。

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XYステージの制御と、USBカメラの画像処理は、Processing を使って、キーボードでXYステージを操作しつつ、ゾーンテストができるソフトを書きました。ちょいちょいと400行程度で、かなーり便利なソフトが書けました。Processing 素晴らしい。

5xのファインダーを使ったので、15cmの鏡がかなり大きく映りますが、20cm鏡とかの検査だと5xだと鏡が収まらなさそう。

鏡を置く台は、手持ちの集成材(18mm厚)を適当に切って作りましたが、一応傾斜調節をM10ネジでできるようにはしておきました(まあまあ便利)。高さ調節は、ネジでもできますが、結局は子供の絵本を台座の下に入れたりしてやってます。

さて、テスターができたので、自分が磨いている鏡の検査をしてみました。

私が書いたProcessingのソフトでは、USBカメラの画像を10枚程度平均化して測定の安定化を図っていますが、かなり有効のようです。

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これは、周辺部の焦点に近いところのフーコーテスト画像。中心部に非常に大きな穴が掘れちゃってます。望遠鏡としては使い物にならないレベルなので、修正研磨を一生懸命やらないといけない感じ。。

ゾーンテストも一応やってみたのでその結果。無題

橙色が、ちゃんとした放物面になっていた時期待される結果。青が私の鏡。話にならんです。

手持ちの望遠鏡(20cm F5)の鏡も見てみたいところですが、それより先に磨き中のこれを何とかしないと。「自習」を進めて、望遠鏡に組み込んで星が見られるレベルに持って行きたいところです。

 

ドブソニアン架台をつくる

20cmの反射赤道儀を持っているんですが、セットアップが面倒でほとんど活用されてなくて倉庫の肥やしになってます。

家に帰ってきてちょっと惑星でも見ようかと思ってからセットを開始すると、まあ、30分はかかってしまうと思うのですが、セットアップやっと終わったら曇っていたり、ごはん食べなきゃってなったり、で、見た後片付けも大変。そもそも、赤道儀も、錘も重いんですよね。。。なので、仕方がないところ。

気楽に星見をしたいなという気持ちは強いので、この手持ちの反射望遠鏡を気軽に出して見られるような「ドブソニアン架台」を作りました。

参考にしたのは、まさに同じ鏡筒をドブソニアン化されている、こちらの方と、

この本 です。

耳軸周りはWebの方を参考に、足回りは、ドブソニアンの本をほとんどそのままパクったような感じです。

板は、前に家具を作った後余って死蔵していた18mmのシナ合板でできるかなとおもって始めたのですが、やや足りませんでしたので、側板は、12mmのラワン合板をホームセンターで切ってもらい、2枚張り合わせて24mm厚の板にしました。結構重厚な板になりました。

水平軸は、10mmのボルトを使いました。

耳軸の円盤切り出しは、CNCルーターがあるので、それでやりました。段取りは面倒ですが、しっかりとした円になるので、道具持っててよかったーという感じです。耳軸の直径は213mmとそれなりの大きさ。

耳軸や水平軸がスムーズに滑る必要がありますが、それにはトスベールを使いました。滑りシートは多くはポリプロピレン製なのですが、これはテフロンで高級版?と思ったのと、フェルトが貼られていないので採用。フェルトやコルクが裏打ちしてあるとこういう用途にははがさないといけなさそうなので。。。

耳軸が大きいこと、木材にしっかりニスを塗ったためか、滑り良すぎて、もう少しフリクション取るような手当てしないといけないですが、できました。

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さっそく、夜空に向けてみます。といっても夕方で見えているのが宵の明星しかなかったので、金星に向けました。かなりの風が吹いていましたが、架台はしっかりしていて、150倍程度のアイピースをつけても対象がぶるぶるすることもなく、細長ーい金星を眺めることができました。台風来襲を控え、非常に風が強いので金星は川の底に居るみたいでしたが。

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娘にも見てもらいましたが、ちょうど目の高さがちょうどよいようで、自分で天体を導入できていましたので、よし!と思いました。

改良点も、実際に星を見ていくつかわかりましたので、直していきたいところです。

  1. 高度軸がすべり易すぎるので、フリクションを調整できる機構がほしい。
  2. アイピースや、キャップなどを置いておくところがほしい。光軸調整用の道具とアイピース、惑星撮影用のカメラなど一通りの星見グッズをセットにしたものを用意しておいて1分で準備できるような形にしたいところ。(温度順応の問題もあるのでそこまでは無意味かも)
  3. 鏡筒と架台を合わせても十分1人で持ち運べる重さであることがわかったので、鏡筒が架台から外れないような機構と、架台にハンドルをつけて、持ち運びをできるようにしたい。
  4. 電動・GOTO化はあまり重要ではなさそうだが目盛環導入ができるとよさそうなので、せめて高度・方位がしっかり読み取れるようなものを付けたい。

初めての天体望遠鏡

この間、乙女高原 星空観望会というのに家族で参加しました。残念ながら夜は曇ってしまっていて、会自体は楽しかったのですが星空が見えなかったという残念な感じだったのです。その会では反射望遠鏡の鏡面研磨をやっていまして、娘が少し研磨を体験させていただいたことが原因なのか?娘が望遠鏡を作りたい!っていうのです。で、将来は鏡面研磨をやるのもいいと思うんですが、やはり順番からいうと、まずシンプルな望遠鏡で自分で主体的に星をみて興味を持つというのが順番なのでは?と思うわけです。

家では、市販の反射赤道儀(実際にはこのリンクの前のモデル)で星を見ていて、娘にも見せてあげているのですが、とても小学校3年生の娘が一人で扱えるものではありませんし、まず気軽に自分で出してみることができる。というのがとても重要だと思います。

というわけで、シンプルな望遠鏡を娘に与えよう!と思い立ちました。

少し昔話をしますと、私がおよそ30年前に最初に手にした望遠鏡はビクセンのカスタム80Mという8cmの屈折経緯台でした。東京の街中でしたが、毎日のように社宅の屋上に持ち出してみていたのを思い出します。星を見ていると、機材も自分で作ってみたりしたくなって、自分でも5cmの望遠鏡を作ってみたこともあります。今となっては小学5年生にどうして設計ができたか思い出せないのですが、都電荒川線に乗ってパノップ光学、という今はもうない町工場に母親の手を引いてレンズを買いに行き、購入した5cm 焦点距離600mmのレンズに合うような鏡筒を設計し、ボール紙に墨汁を塗り、木工用ボンドを塗って、丸めて紙管を作りレンズを同じく紙製のレンズホルダーに収納し、接眼部は、塩ビ管に同じくボール紙製の接眼鏡ホルダーを取り付けて製作しました。架台は木製ピラーの上に載ったフォーク型の架台をべニア板で作りましたが、この組み合わせは持ち出しやすくセッティングも楽でよく見えた覚えがあります。確か、水平動のベアリングが、木の板に油を塗ったものをフォークと台座の間に入れるというもので、スムーズに動きながらもしっかり摩擦で止まるというもので微動要らずだった。

さて、今は2014年なので、娘の最初の望遠鏡にどういうものがいいかな~って考えてみました。昔自作した5cmの望遠鏡のことを思い出しましたので、‘5cmぐらいのにしようと思い、ネット検索をした結果、コルキットKT-5cm(30倍)というのにすることにしました。これは、キットの手作り望遠鏡ですが、紙管で作る、というところがググッとこっちの心に訴えるものがありました。小さな望遠鏡ですが、ちゃんと絞り環も入っていますし、現代の31.7mmのアイピースもつけられるようなので、これにしました。奇しくも昔自作した5cmと焦点距離まで一緒です。

キットでなく購入するのであれば、こちらなんかも安価でいいと思うのですが、望遠鏡を作るという体験ができることを重視してキットにしました。

一緒に微動装置(ビクセン カスタムと同じくタンジェントスクリュー型の微動)も購入したのでそれなりの値段にはなりました。

さて、届いたものはこちら。

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小さくまとまっています。

組み立て方は、必要な道具などを含め、添付の説明書に懇切丁寧に書かれているので、特に難しいということはありません。

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こんな感じで、絞り環を入れるところで管が分割式になっているので容易に絞り環がしっかり入った鏡筒が組み立てられるということです。対物レンズのシェルも、紙管で前後から押さえるという合理的な構造でよくできています。

小学3年生が一人で組み立てる。というのはちょっと難しいようなので、一緒に組み立てるべきところは一緒に。でもなるべく娘の手で組み立ててもらいました。説明書の感じも、まだ習っていない漢字も多いので一緒に読みながら作りました。

ただ、大人も一緒に作りますので、単にキットをそのまま作るというのはちょっとつまらん。ということで、色気を出して、鏡筒の内部に植毛紙を貼りました。植毛紙は、粘着テープなしのものを買い、木工用ボンドで鏡筒の内側に貼りましたが、かなり難しかったです。植毛紙を鏡筒内に貼ることで、絞り環で良好なコントラストで見えるところをさらによくしよう!という心づもり。

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管の奥には植毛紙を貼ってあるのですが真っ黒なのがわかりますでしょうか!?

出来上がったら、昼の間は、遠くの木を使って、導入とピント合わせの練習をしました。

夜になったら、ちょうど西の空に見えている三日月、それから木星、そして南の空に見えている火星と土星を見てみました。

月はクレーターがとても明瞭に見ることができました。30倍の倍率は、月が視界に収まり、月の散歩にちょうどいい感じがしました。次に木星は、縞模様と4大衛星をしっかりと確認することができます。娘にここで地球の自転で星が動いて行ってしまうことを教え、その動く方向が日が西に沈む方向と同じこと(望遠鏡は反対に見えますが。)を話しました。

次に今とても明るく輝いている火星。そして、土星を見ました。土星は当然ですが、輪っかがしっかりと見えました。火星は明るすぎて模様がどうかはっきりわかりませんでしたが、安定した像ではあるので、今度手持ちのもう少し倍率の大きいアイピースをつけて確かめてみよう。

そんな感じで、娘の望遠鏡。飽きずにいろいろ見てくれればいいなと願っているところです。